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大前研一「ビジネス新大陸」の歩き方

《ホンダと経営統合へ》自力での再建が困難になった日産自動車の深刻な経営状況 かつて経営コンサルを務めた大前研一氏が「もし私が社長を頼まれても、絶対に引き受けない」と語る理由

日本の自動車メーカーは激動の時代を迎えている(イラスト/井川泰年)

日本の自動車メーカーは激動の時代を迎えている(イラスト/井川泰年)

 自動車業界を取り巻く動きが風雲急を告げている。12月18日には、ホンダと日産自動車が経営統合に向け協議していることが報じられた。そこには日産が筆頭株主となっている三菱自動車の合流も視野に入っている。

 そもそも大前提として、日産の業績は大きく悪化していた。11月に発表した2024年度上半期(4月~9月)の中間決算は純利益が前年比93.5%減の192億円と大きく落ち込み、全従業員の6.7%にあたる9000人規模の人員削減と世界生産能力の20%縮小に踏み切らざるを得なくなった。日産について、同社の経営コンサルタントを務めた経験もある大前研一氏はどう考えているのだろうか。新刊『新版 第4の波』も話題の大前氏が、日産が凋落した背景を考察し、今後の自動車業界の展望を読み解く。

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 私は40年ほど前、日産の経営コンサルタントを務めていた。英国進出やトヨタに後れを取っていた新車開発などの分野だったが、当時の日産には計画を実行・実現する力があった。

 しかし、それから約10年後、塙義一さんが社長に就任した頃には、関連会社や子会社に本社OBが天下りして“悪しき官僚主義”が蔓延して組織が硬直化し、それに伴う高コストと在庫の山で赤字が膨らんで深刻な経営危機に陥った。

 塙さんはその解決策としてルノーの資本参加を選び、ルイ・シュバイツァー会長に経営陣の派遣を要請した。当時はフランスのタイヤメーカー・ミシュランの北米事業部で子会社の合理化に辣腕を振るったカルロス・ゴーン氏がルノーにスカウトされたタイミングでもあった。「コストカッター」の異名を取っていたゴーン氏を塙さんが迎え入れて自由にやらせたのは、ある意味やむを得ない経営判断だったと思う。

 塙さんは会長を1期務めると、ゴーン氏をCEO(最高経営責任者)にして全権を委ね、引退してしまった。この頃からゴーン氏に歯止めがかからなくなるが、業績は改善していたので、日産の利益貢献に依存していたルノーのフランス本社もゴーン氏に対する牽制が効かなくなってしまった。それ以降の出来事はマスコミで報じられた通りである。

 そして、今また経営危機に瀕する中で、内田社長は手をこまぬいているように見える。再び大胆な経営改革が必要だが、仮に“第2のゴーン”を連れてきたとしても、今の日産を再建することはできないだろう。もし私が社長を頼まれても、絶対に引き受けない。南米やアフリカなど手仕舞いしなければならないところが山ほどあり、もはや打つ手がないからだ。

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