仕事一筋の男性ほど、定年後の新たな人間関係の構築に悩むケースが多い。シニア生活文化研究所代表理事の小谷みどり氏が指摘する。
「血縁、地縁が薄れてきた現代、男性は仕事を離れると誰とも人間関係を築かず、妻に頼り切りになりがちです。妻に先立たれた後、誰にも助けてもらえず悲惨な思いをした、というケースも散見されます。そこで私が勧めるのは、『ありがとう』『助けて』と言える人を配偶者以外に持っておくことです。これを“人間関係のリスクヘッジ”と呼びます。これができれば、その他の人間関係は無理に続けなくてもいい」
遠くに住んですぐに頼りにならないきょうだいや子供よりも、頼りになる他人を数人見つけておくことが重要だという。その人間関係作りの基礎となるのが「雑談力」だ。
「多くの男性は仕事以外の話題を持ちません。まずは自分が興味を持つことを見つけて、雑談力を身につけたい。男性は『BE』(である)を重視した会話をしがちです。例えば、自分が上場企業の部長だったといった、そこから発展しない話をして終わってしまう」(小谷氏)
建前の関係ではなく、本音の関係を築ける
自分が何者であるということよりも、何をしているかという「DO」(する)を意識した話をすれば話が広がりやすい。それには趣味を持つことだと小谷氏は言う。
「地域の公民館の公開講座や近くの大学で公開しているシニア大学などに顔を出せば、何かしら興味を惹かれる講座があるはずです。新年から新規に開講する講座なら新参者ばかりなので輪に入りやすく、共通の価値観を持つ人を見つけやすいでしょう。たとえ趣味がなくても、“妻に先立たれた”“ペットが死んでしまった”といった自分が置かれた境遇をテーマにしたコミュニティも成り立ちます」