主要各国の金融政策を見ると、米国は利上げに転じたものの、世界的に金融緩和は継続。日銀やECB(欧州中央銀行)は強力な量的金融緩和を続けているうえ、昨年はETF(上場投資信託)や社債などのリスク資産購入という質的緩和も強化。中国人民銀行も低金利を続けているうえ、英国中央銀行も量的緩和の再開や社債の購入を決定している。
その結果、各国の経済指標は2016年7月に軒並み底を打ち、続々と好転している。それこそが世界経済にとって大きな転換点だったのだ。
いうまでもなく、それはトランプ大統領誕生など誰も予想しなかった時期である。現在の株高が「トランプ相場」を機に始まったものでないことは明らかだろう。
債券から株式へのグレートローテーション
何より米国経済の好調は「トランプ以前」から始まっている。
2016年に入ってからの各種指標を見ても、雇用統計は雇用者数に目立った増加はないが、平均時給伸び率は大きく伸長。企業と個人などが保有する通貨総量を示すM2(マネーサプライ)も同様の伸びを見せ、不動産(中古住宅)価格はリーマン・ショック前の水準を超えている。
米国の5000世帯に景況感などを聞いて算出する「消費者信頼感指数」を見ると、見事にNYダウと連動して上昇トレンドにあり、これも米国株が最高値を更新する裏付けといえる。
一方、日本の経済指標はというと、生活実感は少ないかもしれないが、実は米国同様に好調さが窺える。
M2の増加はもちろん、製造業の景況感指数(日経日本製造業PMI)や街角の景況感を示す景気ウォッチャー調査の現状判断DI(景気指数)なども揃って昨年7月に底打ちしているのだ。
このように昨年7月を境に日米のファンダメンタルズが強まっているなか、トランプ政権は今後10年間で6兆ドル規模の大型減税と1兆ドルと目されるインフラ投資拡大を掲げ、これが株高の加速エンジンになったと見る方が妥当だろう。
つまり、現在の株高傾向はトランプ政権への期待感だけではなく、より本質的なものである、というのが私の見方だ。