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田代尚機のチャイナ・リサーチ

【ドンロー主義】トランプ次期大統領が進める「米国孤立主義」の落とし穴 着実に進む中国人民元の国際化が金融市場でのドル覇権を揺るがしかねない

米国孤立主義を掲げた第5代大統領・モンロー(Getty Images)

米国孤立主義を掲げた第5代大統領・モンロー(Getty Images)

着実に進む人民元の国際化

 しかし、中国は慎重にではあるが、着実に人民元の国際化を進めている。2024年12月末現在、中国人民銀行はグローバルな主要金融センターをカバーする32の国家地域で34の金融機関に対して人民元の貿易決済業務を認めている。人民日報などによれば、2024年1~10月の人民元による貿易取引額は前年同期比15%増の9兆9000億元に達しており、全体に占める人民元比率は26.6%、前年同期と比べ2.1ポイント上昇している。

 中国人民銀行は1月3、4日、工作会議を開き、2025年における重点業務を発表した。人民元の国際通貨機能をさらに一歩進んで強化し、通貨の互換性、人民元決済銀行の機能を高め、オフショア人民元市場の発展を推し進めるなど、人民元の国際化を着実に進めなければならならないと強調している。

 各国通貨当局との協力関係を深め、通貨交換のコスト、為替変動リスクを引き下げるとともに、各国金融機関に対して人民元決済システム(CIPS)への参加を促すこと、債券通(内外の投資家が相互に債券売買をするためのメカニズム、海外投資家は香港において中国の国債、企業債、金融債などを売買ができる)、互換通(内外の投資家が相互にデリバティブ取引をするためのメカニズム、海外投資家は香港において中国の銀行間デリバティブ市場にアクセスできる)を通して、国内人民元市場へのアクセスルートを改善したり、パンダ債(国外発行体が本土市場で発行する人民元建て債券)発行規模を拡大したり、人民元の国際競争力を高めるとしている。

 2018年における世界全体の輸出額に占める中国の輸出額の割合は12.7%であったが、2023年にはそのシェアを14.2%まで伸ばしている(UNCTAD)。この間、米国における中国輸入依存度は表面的にははっきりとした低下傾向がみられ、そのことばかりが注目されがちだが、米国による対中追加関税措置がかけられてからも中国のグローバル輸出シェアは上昇している。ちなみに2018年と2023年を比較すると、米国のグローバル輸出シェアは8.5%でかわらず、日本は3.8%から3.0%へと低下している。

 新型コロナ禍を経て中国の輸出競争力が一段と引き上げられたといった要因(2021年の中国のグローバル輸出シェアは14.9%)もあるが、自動車の輸出が短期間で急増し2023年には日本を抜き去り世界1位となったり、2024年1-11月の半導体輸出額は1兆291億元(22兆1247億円、1元=21.5円)で20.3%増となるなど、中国の輸出構造が高度化し、加えて輸出先の分散度が高まったことなどによる影響の方が大きいであろう。米国が孤立主義をとり、中国がASEAN、中東、南米、アフリカ、ロシア、東欧、更にはEUなどと広域にわたり外交関係をさらに強化すれば、CIPSへの参加率は高まり、ドル覇権維持の最大のよりどころとなっている国際銀行間通信協会のネットワーク・SWIFTに関して、その利用率の相対的低下を引き起こしかねない。

 足元をみれば米国経済は好調であり、ドル需要は強く、米国金融システムは強固のようにみえるが、だからと言ってトランプ2.0がもたらす悪影響を軽視すべきではない。

文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」も発信中。

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