人のつながりにほのぼのとする
隣席へ、一人のお客さんが、ふらりと現れた。ケンちゃんの上司、Iさんである。ああ、そうですよ、ここは、お膝元なのだ。Iさん、気さくに私たちの昼酒に付き合ってくださった。お世話になっている方との邂逅は嬉しいものだ。Iさんの注文は、酒はビールからハイボール、つまみはザーサイと肉の天ぷらという。いいですねえ、昼酒が進む組み合わせだ。
Iさんと私は年齢が近いから、ちょっと昔の話をするにしても、知人の中に共通の人がいるので、思わぬところで若い頃の人間関係がすぐ側で展開していたことがわかって楽しい。
昨今では、どうやら近くにいたらしいという人の消息について、その人が亡くなった後で聞くことなども増えているから、正月早々ばったり会って軽く飲みながら、人のつながりに思いが及ぶのは、心がほのぼのとして、実にありがたい。正月って、いいものだと思う。
そこへ、私の頼んだレバネギ炒めも登場した。ネギのみならず、ニンジン、ピーマンの彩りも嬉しい立派な一品。これも、白飯と一緒にかきこみたいが、これも年齢のせいか、その食欲も旺盛とは言いがたい。
ここで大いなるしくじりに気がついた。私は、肉団子に、肉の天ぷらもつまみ、ザーサイは好物であるから当然箸をのばし、さらにはレバネギも堪能するのであるから、レバネギを選んだ唯一最大の理由としての「にらそば」は、もう腹におさまらぬ、のである。
こちらの「にらそば」は、後で調べてわかったことだけれど、某コンビニエンスストア限定のカップ麺にもなっているという。名物なのである。そんなことを知るほどに、素通りできぬくせに素通りせざるを得ない還暦過ぎのへたり胃袋に、腹が立つのである。
しかしながら、こればかりは仕方がないのだ。諦めるしかない。正月昼酒の裏を返す機会にこそ、「にらそば」をすすりつつ、紹興酒をやりたいと思う。