宵酒率10割の男
そうこうしているうちに、酒は軽く回ってきた。暮れなずむ神保町で、いい気分だ。かくなる上は、あの店か……。電話をしてみると、正月7日、まさに、この日から店を開けているという。ケンちゃんを誘って神保町から須田町へ。勝手知ったる道を行き、馴染みのおでん屋さんの暖簾を潜った。
町中華からおでんへ。「にらそば」を諦めたくせに、おでんの老舗の店主の腕がさえるつまみがうまい。白鷹の燗がうまい。
昼酒が宵酒につながる確率は、どの程度だろう。ふと、そんなことを考える。人によるのだろうけれど、自らを振り返れば10割に限りなく近い。私は、競走馬の世界でいう、長距離馬、ステイヤーなのである。
ちなみに、競馬の一番人気の勝率は3割くらいと言われているのだが、私の宵酒率10割とは、まったく関係のない話だ。
【プロフィール】
大竹聡(おおたけ・さとし)/1963年東京都生まれ。早稲田大学第二文学部卒。出版社、広告会社、編集プロダクション勤務などを経てフリーライターに。酒好きに絶大な人気を誇った伝説のミニコミ誌「酒とつまみ」創刊編集長。『中央線で行く 東京横断ホッピーマラソン』『下町酒場ぶらりぶらり』『愛と追憶のレモンサワー』『五〇年酒場へ行こう』など著書多数。「週刊ポスト」の人気連載「酒でも呑むか」をまとめた『ずぶ六の四季』が好評発売中。