恐ろしいほどの現実との符合
そうしたなか、本誌・週刊ポストは前述した台湾有事シミュレーションの詳細な内容を入手した。
そこで示されていた前提条件は、トランプ氏の返り咲き以外の点でも、実施された後の現実世界の動きと驚くほど符合していた。
《台湾の頼清徳氏が総統に就任した2024年5月から、中国人民解放軍は台湾周辺の「封鎖演習」を断続的に実施するとともに、中国海警局の監視船は台湾に出入りする一部の船舶への「臨検」を展開した。これによって物流が滞った台湾内では、エネルギーや物資が不足し始めた。サイバー攻撃も熾烈となり、金融システムや公共インフラにも被害が出た──》
まさに現実世界でも、中国は2024年5月と10月、台湾を封鎖する軍事演習に加え、海警局の監視船が加わった軍事演習「聯合利剣2024」を2回にわたり実施している。
中国は「一つの中国」原則を主張しており、台湾を「自国の領土」とみなしている。その周辺海域で政府の公船である海警局船による「臨検」を行なうことはあくまで「国内の法執行」となる。国際法上戦争とみなされる「海上封鎖」とは異なる、という認識だ。
これに対抗するため、シミュレーションでは、トランプ大統領就任後に米軍が自衛隊と合同で、「B-2爆撃機」や「F35戦闘機」などを台湾周辺に派遣する。ミサイル駆逐艦も自衛隊の護衛艦と合同で、台湾海峡を通過した。
これを受け中国側はさらなる報復に出る。大型海事巡航救助船「海巡06」などを台湾海峡に展開して「臨検」を実施。〈臨検に従わない船舶はいかなる国・地域の船籍であっても、海警局によるあらゆる強力な対抗措置の対象となる〉と武力行使も辞さない姿勢を示した(以下、〈 〉内はシミュレーションの記録内容)。
こうした事態に、各国チームを演じた面々は手をこまねいたという。封鎖を破ろうと、政府の公船である海警局の監視船に攻撃したら「先制攻撃」となり、中国との全面戦争に発展するからだ。