「台湾併合に向けて有利な状況が整った」
シミュレーションの進行役を務めたのはキヤノングローバル戦略研究所の峯村健司・主任研究員だ。元朝日新聞編集委員で北京特派員やワシントン特派員を務め、外交安保の専門家として知られる。峯村氏が目的を語る。
「国会議員や官僚など参加者が台湾有事を疑似体験することで、政府の体制や自衛隊の装備、法律面の不備などを洗い出す目的で実施している。
参加者は進行する事態に応じて対応を議論する。中国の『臨検』に対して日本政府はどんなリアクションを取るか、海運などの民間企業から政府にどんな働きかけがあるのかを検討し、メディアチームが政治家に『どうするのか』と追及するなどリアルにやります」
峯村氏は、トランプ大統領の就任と韓国の政治混乱で現在、台湾有事の危険性はより高まっていると指摘する。
「韓国の政治混乱の『影の勝者』は中国だと言ってもいい。中国はかねてから韓国の左派などに親中派をつくるといった様々な『影響力工作』を展開してきた。日米韓の同盟を重視する尹大統領は目の上のたんこぶだった。その尹大統領が失脚し、左派が台頭してくるのは日米韓の関係を悪化させる好機なわけです。習氏は台湾併合に向けて有利な環境が整ったと考えているでしょう」
別記事《【図解:中国が目論む台湾の海上封鎖】“霞が関の頭脳”が集結した「習近平の台湾制圧」極秘シミュレーションの決着 日本はトランプ大統領にハシゴを外される厳しいシナリオも》では、その後の詳細シミュレーションと思いがけない決着、さらに中国によるフェーズごとの台湾海上封鎖の状況を図解とともに説明している。
※週刊ポスト2025年2月7日号