丸刈り姿で救出された中国の俳優・王星(微博@泰国网より)
足元の海外旅行に関してだが、世界最大規模クラスのオンライン旅行会社である携程集団によれば、12月20日時点の海外旅行に関する検索指数は例年になく好調で、前年同期比51%増、伸び率では国内旅行の検索指数の伸び率である15%増を大幅に上回った。地域別にみると、日本、韓国は倍以上、東南アジアは47%増、その他、中東、アフリカ、ラテンアメリカなどは50%を超えたそうだ。
日本政府観光局によると、2024年における訪日外国人は47.1%増の3686万9900人で過去最多を更新した。国別トップは韓国で前年同期比26.7%増となる881万7800人、第2位は中国で698万1200人で伸び率は187.9%増と大幅な伸びとなっている。以下、台湾、米国、香港、タイと続く。
また、2024年における訪日外国人旅行者による消費額は53.4%増の8兆1395億円で、こちらも過去最高を更新した。国別の消費額シェアをみると、中国が全体の21.3%を占め、2019年以来のトップとなった。日本のインバウンド消費にとって中国人観光客の動向が大きなインパクトを持っていることがよくわかる。
中国人俳優がタイで拉致された事件が拡散
今年の訪日観光客の見通しだが、中国からの訪日客数は、過去最高となった2019年の水準と比べればまだ27.2%少なく、回復の余地を残している。足元の旅行需要も好調だ。さらに、競争相手となる韓国では政治的な混乱が続いており、タイでは治安の悪さが問題となっている。中国からの訪日観光客の増勢が続く有利な条件が揃っている。
タイについてだが最近、中国人が誘拐される事件が相次いで発生している。端役ではあるが、いくつかの中国人気テレビドラマに出演経験のある中国人俳優(王星、芸名は星星)が1月3日、映画撮影のために渡ったタイで失踪する事件があった。中国政府がタイ政府に働きかけたことで、1月7日に無事救出されたのだが、失踪直前まで連絡を取り合っていた女友達が機転を効かせ、かつて星星が出演したドラマの俳優仲間に助けてもらいながらSNS上で事件の詳細情報を拡散させ、社会問題化したことが大きい。
誘拐したのは中国系電話詐欺グループで、連れていかれた先のミャンマーでは同じように拉致された人物を50人程度目撃したそうだ。その後、当局は監禁され詐欺行為に加担させられたのは174人だと発表している。星星に続き、このグループに拉致されていたモデルの楊澤琪氏が中国に帰国したとの報道もあり、SNS上ではこちらも大きな話題となっている。この事件のほか、2名の20代の女性がタイを旅行中、誘拐され、ミャンマーに連れていかれた事件などの情報も拡散されている。
事件解決直後の頭髪をそられた星星の痛々しい画像に、誰もが身近に感じている電話詐欺犯罪のイメージが重なり、大量の旅行キャンセルが生じているそうだ。