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東芝は失敗、日立は成功の「選択と集中」 差はトップの覚悟

 そして技術者集団ならではの正確な現状認識に基づいて事業などの将来性を見通す『目利き力』があったからこそ、コアでない事業を果断に切り捨てられたといえるでしょう」

 さらに、IT・通信分野の専門調査を手がけるMM総研の中村成希・執行役員研究部長(アナリスト)は、こう付け加える。

「日立は有望視されるIT分野でも、利益の少ない事業は遠慮なく切っていきました。その一方で、今後も収益拡大が見込める分野では、無理をしない範囲で事業を拡大してきた。

 2014年には、顧客がネット経由でコンピューターやソフトウエアを利用できるクラウドビジネスに参入するため、先行していた米アマゾンと提携。すべて自前の事業にせず、身の丈を超えない範囲に収めるなど、きめ細かい『選択と集中』を進めてきたのです」

時価総額が低いカラクリ

 これらは川村―中西ラインによる社内改革の成果だが、データなどを積み重ねて分析する理系出身トップは、世間の耳目を集めるキャッチフレーズなどを巧みに生み出す文系出身トップに比べ、地味に映る。そんな雰囲気もあってか、市場関係者の注目度は決して高いとはいえない。カブドットコム証券の山田勉・投資情報室長(マーケットアナリスト)の見方だ。

「日立に比べると、グループとしての層が薄かった東芝は、総合電機メーカーとして常に日立と比較されてきたから、『チャレンジ』なる言葉を駆使してまで無理をせざるを得なかった。もっとも日立は優良子会社が多いがゆえに、それを存分に活用しきれていないという見方が証券業界には多く、マーケットでの日立の評価はあまり高くないのが実状です」

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