そうなった場合、トランプ大統領のアメリカ国内の雇用を増やすという大目標は雲散霧消し、雇用は大きく減ることになり、実質賃金も大幅に下がるので、今のトランプ支持層からも不満が爆発しかねません。
それを避けるために、トランプ大統領が打つ手はこれまでの言動から明白で、“恫喝と強要”という手段を採るでしょう。具体的には、1980年代後半から1990年代前半に、アメリカが日本などを相手に行なった恫喝と強要外交の再現だと思います。
1980年代末にアメリカは包括通商法の中に「スーパー301条」というものを作りました。これは、アメリカの通商代表部が各国の輸入規制や非関税障壁で気に入らないものがある場合、「これを是正せよ」と要求し、それでも改めないと、その国の一番大切な産業品に高率の輸入関税を課すというものでした。
例えば、トヨタがメキシコにカローラの工場を作ることに対してトランプ大統領は、「とんでもない! アメリカに工場を作れ。さもないと高い報復関税を課すぞ」と文句をつけた。まさにスーパー301条と同じ恫喝方式をすでに使っているのです。
さらに、トランプ大統領はドル高を防ぐために、国際協調とは名ばかりで実際には日本に円高誘導を迫った、1985年の「プラザ合意」タイプの強要を行なってくることまで考えられます。当時はその後の2年間で、ドル/円相場は1ドル=240円から120円まで円高が進み、日本は円高不況に陥りました。
窮地に陥りそうになれば、必ずやトランプ大統領はそうした恫喝と強要の手口を繰り出してくる。恐らく年内にはやってくると見ます。
1980年代後半から1990年代前半を振り返れば、それがどういう結果を招くのか明らかです。急激な円高進行によって日本経済はガタガタになり、日経平均株価も大きく下落するでしょう。
※マネーポスト2017年春号