「アメリカ的」なもののルーツ
松井:民主主義、自由貿易の旗頭だったアメリカやイギリスが、経済統合にも移民政策にも急に後ろ向きになりつつあるのは気になります。
松田:彼らの多くも、これまでの成長や繁栄が「自由貿易と移民あってこそ」ということを頭では理解しつつも、選挙や国民投票では「でも、もうたくさんだ」との声が上回ってしまったということですね。トランプ氏だってお爺さんがドイツから渡ってきた移民で、そのわずか2代あとにこれだけの富と地位を築いた「アメリカン・ドリームの象徴」のような経歴なのは皮肉です。
松井:え、そうなんですか。トランプっていかにもアメリカ的な名前ですが。
松田:お爺さんはDrumpf(ドゥルムプフ)という、ドイツらしい名字だったそうですよ。余談ですが、アメリカの通貨の名前「ダラー(ドル)」も、今のチェコにあったヨアヒム谷で採れた銀で作った貨幣を「ヨアヒム『谷の』(ヨアヒムス『ターラー』)」銀貨と呼んでいたのが、「ターラー」の部分だけ独立して広くお金の単位として使われるようになったんです。
松井:えっ。ドルはアメリカが発祥で、それがカナダ、オーストラリア、ニュージーランド、香港などでも使われるようになったとばかり思っていました。松田 200年ほど前に活躍したドイツの文豪ゲーテの手紙などを読んでも、当時はヨーロッパの各地でターラーが使われていたことが分かります。
※マネーポスト2017年春号