*12:09JST プロディライト Research Memo(9):従来の事業戦略に加え、新たにM&A戦略も強化
■プロディライト<5580>の中期経営計画見直しと業績見通し
4. 見直し後の事業戦略
新たな事業戦略では、従来の事業戦略を「INNOVERAの機能拡充」「INNOVERAの販売戦略」「ブランド力の強化」「M&A戦略」へと組み替えた。新たな事業戦略においても、「INNOVERA」の機能拡充や販売強化によって「INNOVERA」のアカウント数や「IP-Line」のチャネル数などのKPIを向上させ、リカーリング収益を拡大して中期成長につなげるという大きな方針は変えていない。
(1) INNOVERAの機能拡充
「INNOVERA」では、先端技術による進化、「INNOVERA」のアップデート、連携の強化、新サービスの展開を推進するなど機能拡充により利便性を向上し、日本のビジネスフォン市場における技術革新をリードしていく方針だ。先端技術による進化では、「INNOVERA Emotion」で音声から人の感情を分析できる技術を実用化、関連特許を取得した。音声翻訳は2025年8月期中に、多言語通訳は2026年8月期以降に導入予定である。「INNOVERA」のアップデートでは、従来型の据え置きハードウェアPBXは一般的に年単位でのアップデートに留まるため機能改善の頻度が少ないが、クラウドの優位性を生かして大小含め月1回のアップデートを行い、基本機能を一層使いやすく進化させる。連携の強化では、SaaSサービスを中心に今後も協業や連携を推進していく予定だ。また、「INNOVERA」で培った音声通話部分の技術を、他社サービスに提供するビジネスモデルも模索する。新サービスの展開では、「INNOVERA SMS」や「Telful」などのように、「INNOVERA」からスピンアウトした機能特化型のサービスの提供を強化する。
(2) INNOVERAの販売戦略
販売効率の向上を目指し、市場動向などに応じて継続的に組織体制の見直すことで、営業関連組織体制を最適化する方針だ。そのなかで、地方への進出や電話関連サービスのセールス強化、パートナーシップの強化、顧客接点の強化などを推進する。地方への進出では、地方都市の番号提供や番号そのままでの乗り換えを支援する。また、アフターサポートを武器に日本を東西に分けて事業展開し、東日本事業部では「INNOVERA」専売と関東・中部圏だけでなく札幌や仙台、東海エリアなど未開拓の地方を攻略、西日本事業部でも「INNOVERA」専売、関西・九州圏に加えて中国・四国エリアなど未開拓の地方を攻略する計画だ。電話関連サービスのセールス強化では、ソリューションセールス事業部を新設し、Yealinkで唯一の正規日本総代理店として国内流通を掌握するほか、「Telful」など「INNOVERA」から派生したサービスの販売も強化する。パートナーシップの強化では、全国拠点を持つ大手商社(パートナー)を担当・支援するための専用チームとして広域営業チームを新設し、大手商社が持つ顧客にリーチする。顧客接点の強化では、カスタマーサクセスグループを強化し、サポートのさらなる強化によって回線利用量の増加を図ることで単価向上やアップセルを狙う。将来的にはインサイドセールス※機能の強化も視野に入れる。
※ インサイドセールス:内勤営業のことで、電話やメール、Web会議などを用いて顧客とコミュニケーションを取る。
(3) ブランド力の強化
サービスコンテンツとIR視点からの事業情報の発信を拡充することでブランド力を強化する方針で、そのため経営企画室を新設し、オウンドメディアの構築と発信やサイトコンテンツの充実を推進する。オウンドメディアの構築と発信では、IR note マガジン※に参画し、決算など適時開示情報の補足や株主通信、事業情報、各種情報プラットフォームへのリンクなど、ステークホルダーが興味を持ちそうな情報をオウンドメディアに集約し、同社情報へのアクセス性を向上させる。経営企画室の新設では、経営戦略の立案と実行に加え、ステークホルダーに対するIRや広報、マーケティング活動を行う。サイトコンテンツの充実では、コーポレートサイトやブランドサイトにおいて、SEO対策や問い合わせ増加を狙うだけでなく、サイト回遊やコンバージョン拡大につながり、IRや広報にも効果のあるコンテンツを作成する。
※ IR note マガジン:メディアプラットフォームのnoteを活用して上場企業のIR記事を配信するnote公式マガジン。
(4) M&A戦略
新たに組み込んだ事業戦略で、クラウドPBX市場への追い風を背景に、クラウドPBXのリーディング・カンパニーとして既存事業とのシナジーを重視したM&Aによって非連続的な成長を進め、企業成長を加速させる方針だ。こうした方針の下、同社は2024年11月に(株)NNコミュニケーションズ(2024年3月期売上高1,388百万円、営業損失24百万円)をM&Aした。NNコミュニケーションズは、インターネット回線の契約取次業務のブロードバンド代理店事業、移動体通信基地局の設計・施工・コンサルティング、ネットワーク関連の設計・施工などを行っている。同社にとって、NNコミュニケーションズが得意とするWebマーケティングによる「INNOVERA」の販路拡大や、導入時のLAN工事など拡張した「ワンストップ・ソリューション」の提供がシナジーとして期待できる。また、新たに開発する「INNOVERA」の廉価版を、NNコミュニケーションズを通じて少人数の企業に販売することも検討している。NNコミュニケーションズは、現在ほとんど利益がない状況だが、同社にM&Aされたことにより2026年8月期には黒字化する計画だ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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