そして、アメリカには、人口の多いベビーブーマー世代を中心に、活躍する女性や台頭する有色人種に対する暗い嫉妬を数十年にわたって積もらせてきた人々が、思いもよらないほどに大勢いた。その鬱憤を晴らしたことがトランプの最大の勝因であり、彼らの期待を裏切ればトランプの政治的な命運は尽きる。
メキシコ国境に壁を造ろうとしたり、イスラム教徒からビザを取り上げたりすることは、トランプにとっては再選に向けた重要な選挙活動なのであろう。
中国、メキシコ、日本、ドイツに敵意を見せつける理由
一方、経済政策に関しては、余念なく私欲の追求に邁進している。まず、自らの属する富裕層の税負担を軽減し、リゾート開発の邪魔になる環境規制を緩和する。もちろん、国務長官をエクソンモービルから迎えるほどに知己の多いエネルギー業界への配慮でもあろう。
あれだけ「ヒラリー・クリントンと癒着している」と攻撃していた、庶民に評判の悪いウォールストリートに対しては、早速、大盤振る舞いの規制緩和に乗り出した。銀行は、トランプの事業にとっては何よりも大切な金主であるから、最初から分かりきっていた行動ではあるが。
減税や壁建設に要する財源については、今のところ、低所得者層を犠牲にする公的医療保険の廃止の他に提案はない。WTO(世界貿易機関)のルール違反の疑いが濃厚な実質的な輸入関税の強化を目論んでいるようであるが、それはドル高を招いてアメリカの製造業の競争力を低下させる。