いずれ、共和党主流派と折り合いをつけて、国債増発によるバラマキ公共事業を言い出す腹づもりかもしれない。それにしても、富裕層以外の一般的なアメリカ人にも明らかな恩恵が見込まれる経済政策は、ただ公共事業のみである!
アメリカの製造業を復興して雇用を増やすと大見得を切ったのは、選挙用のリップサービスに過ぎなかったのではあるまいか。実際のところ、目下のアメリカ景気は好調で、放っておいても雇用は増える。
問題は、公共事業のカンフル剤がうまく効いたとしても、次の大統領選が行なわれる2020年まで景気拡大の寿命が持つかどうかである。トランプが、個別の企業の工場立地に文句をつけたり、貿易収支の赤字が大きい中国、メキシコ、日本、ドイツに対して常軌を逸した敵意を見せつけるのは、米国民受け狙いに加えて、景気が停滞した時に備えたスケープゴート作りに励んでいるのではなかろうか。
それは、私たちにとって、決して気分のいい話ではない。しかし、人格高潔なオバマ大統領の下でも、アメリカは、リーマン・ショック後の不況から脱するために、FRB(連邦準備制度理事会)による量的緩和という強烈なドル安政策を採った。トランプであれば、自分の手柄にするために、ドル安誘導を宣言してくるであろう。その時は持ち株すべてを売ればいい。
投資家にとって油断は禁物ながら、当面は、トランプの奇矯な言動はあまり気にかけずに、日米中の景気や企業業績の数字を地道に追っていけばいいのではないかと思う。そして、彼の者が、ニクソンのように国際金融秩序をひっくり返したり、ヒトラーのように軍隊を動かしたりすることだけはなからんよう、それぞれの神に祈ろう。
※マネーポスト2017年春号