*13:08JST propetec Research Memo(8):2026年11月期に営業利益28億円を目指す
■中期経営計画
1. 中期経営計画「VISION2026」
property technologies<5527>は、2024年11月期にスタートし2026年11月期を最終年度とする中期経営計画「VISION2026」を策定している。そのなかで、サステナブルな未来を創造する基盤を構築するため、成長戦略として仕入の質的向上、販売の質的向上、コアコンピタンス強化を掲げるとともに、ビジネスの質にこだわった成長と新たな顧客サービスを展開する素地の獲得を目指している。これにより、2026年11月期にマンション引渡数年間2,000戸、売上高600億円、営業利益28億円、直仕入販売割合7.5%〜10%、在庫期間200日という経営数値目標の達成を計画している。さらに2030年に向けて、最適な住まいを得られる取引環境の創出、価値ある中古物件の循環を促進する仕組みの構築、情報を軸とした協業に基づく新たなビジネスモデルを実現するとともに、「KAITRY(カイトリー)」の定着によって精度と透明性の高い価格査定を確立し、より安心で簡便な不動産取引を実現する考えだ。
戦略的対応として厳選仕入などの施策を展開
2. 成長戦略の進捗
中期経営計画の経営数値目標を達成するため、同社は当初、リアルの拠点拡大やSaaSプロダクトを使った仲介会社との連携強化、「KAITRY(カイトリー)」の飛躍的拡大により、中古住宅再生事業の成長を加速する方針だった。各戦略の成果と課題を反映し、足もとでは戦略的対応として厳選仕入を中心としたスタンダードマンションの事業基盤整備やプレミアムマンション買取再販の拡大といった施策を進めている。この結果、2025年11月期は増収分をプレミアムマンションが稼ぎ、2026年11月期以降はプレミアムマンションの販売加速とスタンダードマンションの再拡大による売上成長を、そして在庫リフレッシュによる売上総利益率の向上と固定費抑制による販管費率の改善を背景に売上成長を上回る利益成長を果たし、営業利益目標の28億円に近づくというシナリオを想定している。当初と比べて利益を創出しやすいビジネス構造に軌道修正した感のあるシナリオといえる。テクノロジーの活用に関しても、2025年11月期には研究開発組織PropTech-Labを立ち上げ、またKAITRY financeの導入先及び用途の拡大といったビジネス基盤強化の面で進捗があり、リアルビジネスの後押し効果も期待される。
(1) 仕入の質的向上
主要施策として、ポータルサイト「KAITRY(カイトリー)」の利用度向上やSaaSサービスからの情報流入量増加による査定数(仕入情報)70,000件(2023年11月期33,222件)の達成、「KAITRY(カイトリー)」直仕入割合の10%(同2.1%)への増加を進めている。足もとでは、査定数の増加や各支店・エリアのデータ分析に基づく仕入ルールの明確化という成果があった一方、高質物件の仕入につながる情報流入経路の最適化やプロモーションの強化という課題が残った。このため、査定件数や直仕入れの割合の上昇以上に、利益を重視する観点から厳選仕入と在庫コントロールを徹底するための情報収集を優先することになった。今後の再成長局面でも、厳選仕入と在庫コントロールを優先した展開となる見込みである。
(2) 販売の質的向上
主要施策として、在庫保有期間を200日(2023年11月期から1ヶ月短縮)、直販ルートを確立して中古マンション売上高の7%の直販を達成するとともに、販売計画の精緻化や物件情報の提供強化を進めている。足もとでは、厳選仕入物件の販売数が増加し、当該物件に係る粗利率や保有期間が改善するという成果があった一方、ポータルサイト「KAITRY(カイトリー)」を整備したものの直販ルートが未確立という課題があった。このため、直販については広告の拡大を1年先延ばしし、2025年11月期に改めて本格展開する予定である。
(3) コアコンピタンスの強化
情報網羅性・見える化向上、査定精度向上、新規事業/プロダクト開発体制の強化を目指すなかで、主要施策としてPropTech-Labを立ち上げ、開発体制を強化するとともに査定精度の向上を図っている。足もとでは、PropTech-Labによる国土交通省案件への参画、SaaSサービスの提供に伴う査定精度とユーザビリティの向上といった成果は得られたが、メガバンクや地銀の住宅ローン審査など幅広い業務に対応できるための査定精度のさらなる向上や機能の拡張が課題となった。しかし、エンジニアやディレクターなどテクノロジー関連の人員を増強していることから、遠からず精度や機能は改善していく見込みである。なお、プレミアムマンション買取再販を新規事業として立ち上げたが、当初想定したスタンダードマンションの量的拡大と置き換わるだけでなく、営業拠点数や人員数に過度に依存しない効率的なビジネスとして今後大きな収益貢献が期待される。
■株主還元策
安定的な配当を背景にステークホルダーとともに成長を達成する考え
同社は、グループ事業展開のための内部留保の充実と成長に応じた利益還元を重要な経営課題であると認識している。現在、同社は成長過程にあることから一層の業績拡大を目指しており、内部留保した資金を競争力強化による将来の収益力向上や効率的な体制整備に有効に活用しつつ、2024年7月の減資によって広げた配当可能利益をベースに安定的な配当を行うことで、幅広いステークホルダーとともに中長期的な成長を達成する考えである。このような基本方針により、2025年11月期の1株当たり配当金は前期と同額の45.0円を予定している。なお、2024年1月に、経営環境の変化に対応した機動的な資本政策を行うため、投資ファンドの保有する85千株の自己株式の取得を行った。成長と株主還元を両睨みしつつ、流通市場への影響を和らげる効果を考慮した策と言える。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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