「ホモソーシャル」という言葉は『男の絆』や『男の付き合い』といった意味で使われることが多いが…(写真:イメージマート)
昨今、男性の間でも“容姿いじり”が問題視される機会が増えており、最近でも、ある男性アイドルグループ内で特定のメンバーについて、「かっこいいな」「やっぱイケメンだわ」などと発言、容姿への言及が度を越しているのではないか、と物議を醸したばかり。ネット上では「ホモソいじりは時代遅れ」「見ていて不愉快」という声が男性、女性どちらからもあがっている。なかには「いじりが不快なのでファンを辞めた」という人もおり、「ホモソーシャル老害ムーブ」という言葉まで登場した。
「ホモソ」とは「ホモソーシャル」の略語で、こうしたコミュニケーションで笑いを取ることに嫌悪感を示す若者は少なくない。ホモソーシャルなコミュニケーションのどこに問題が潜んでいるのか、あらためて考えてみたい。【前後編の前編】
ホモソーシャルなコミュニケーションは男性自身を苦しめる
そもそもホモソーシャルとはどういう概念なのか。都内の大学で社会学の講義を担当している男性教員・Aさん(40代・准教授)は、次のように解説してくれた。
「ホモソーシャルとは、同性同士の結びつきや関係性を意味する社会学の概念です。とくに『男の絆』や『男の付き合い』といった意味で使われることが多いですが、そう単純なものではない。その背景には女性をモノとして扱ったり、見下すことによって結束するような女性蔑視(ミソジニー)や、男仲間にホモセクシャルではないことをアピールするホモフォビア(同性愛嫌悪)が横たわっていると指摘されます。
男性同士での下ネタや、性的ないじり、たとえば『童貞をバカにする』『風俗をネタにして笑いを取ったり、連れ立って店に行く』などの行為もホモソーシャルなコミュニケーションの一つで、非常に不快に感じている男性もいます。しかし、空気を悪くしたくない、つまらないやつだと思われたくない、という理由からなかなか声を上げづらい。嫌々ながら同調したフリをして、男社会からパージされないようにするケースも少なくありません。
学生時代だけでなく、社会人になって会社で上司に好かれようと、無理して同調するというケースも散見されます。これは決して笑えないことであり、いじめである。ダサいことなんだ、という価値観を共有することはとても大切です」(Aさん)