時代と共に変わるコミュニケーションの方法(写真:イメージマート)
男性アイドルグループ内での度を越した容姿への言及に対して、ネット上では「ホモソいじりは時代遅れ」などの声が上がっている。「ホモソ」とは「ホモソーシャル」の略語で、同性同士の結びつきや関係性を意味する社会学の概念。「男の絆」や「男の付き合い」といった意味で使われることも多いが、その背景には女性をモノとして扱ったり、見下すことによって結束するような女性蔑視(ミソジニー)や、男仲間にホモセクシャルではないことをアピールするホモフォビア(同性愛嫌悪)が横たわっていると指摘される。
特に中高年世代を中心に、そうしたコミュニケーションは悪いことではない、という価値観も少なからず残っているいるが、どうすればそうした行為がなくなるのか、あらためて考えてみたい。【前後編の後編。前編から読む】
「僕の時代は耐えるしかなかった」いじりに耐えてきた年長世代
自身も40代ながら、「ホモソいじりはダサい」という若い世代の価値観が広まってほしいと語るのは、外資の戦略系コンサルで勤務する男性・Dさん(41歳)だ。
「僕はいま41歳ですが、新入社員や就活生と飲む機会があると『ホモソはいやだ』という話をよく聞くようになりました。都内の中高私立一貫校で育ちましたが、学生時代には『男同士だから』という理由で性的な話をされたり、見た目をいじられて傷ついた記憶があります。そもそも人生で『ブス』『ブサイク』と何度いじられたか分かりません。
僕の時代は、そこで『いじられるのはオイシイ』『いじりに乗ってこそ面白い』という空気があって、本当はすごく嫌なのに無理して合わせていました。でも、そういう笑いの取り方や、男同士の結束の仕方はダサイんだという価値観が広まりつつあるのは、とてもよい傾向だと思います」(Dさん)
そんなDさんは、自分も含めた年長世代が、価値観のアップデートをしていくべきだという。とくに「女性にだけ気を遣えば良い」という風潮は間違っていると指摘する。
「新入社員向けに人権問題やLGBTQに関する講習を実施している企業も多いでしょうが、そのなかでホモソーシャルなコミュニケーションで傷つく人がいることも、しっかり盛り込んでほしい。僕よりも上の世代は、まだ『いじり』や『愛のあるコミュニケーション』だと思い込んでいますが、それではこれからの時代ついていけません。
性的マイノリティや女性に対して気を遣えば良いと思っている年長世代も多いですが、そういう問題ではない。同性であっても相手の尊厳を傷つけてはならないという、当たり前の話なのです。『本人がいじられて喜んでいるから良いじゃないか!』という加害者もいますが、それも含めて作られた空気だということを理解すべきです」(Dさん)