大学の学部時代は「スクールカースト」を身をもって感じたという。
「もともと高校時代に勉強が嫌いで、『美大受験なら勉強しなくてもいいし、楽そう』という軽い気持ちで油(油絵のこと)を始めたんです。美術についてとくに素養もなかったのですが、予備校で習ったように絵を描いて、なんとなく受験に受かってしまった。
でも大学に入ると、美術のエリートのような子も多くて、知識や教養のレベルや、アートにかける想いといったものの差を感じました。温度差っていうヤツですね。家がお金持ちで、ファッションもおしゃれな人たちはグループでかたまって、学内で夜もお酒を飲んでクラブではしゃいでいました。
私は友達も2人くらいしかできなくて、地味な4年間を過ごしました。大学時代は『描きたいことがない』とスランプに陥って、先生から講評で『絵を描く意味がない』とボコボコにされるなど、辛かった。就職のことも考えずにダラダラ悩みながら過ごしてしまって、結局そのまま大学院に進学することになったんです」
大学4年の頃から、学内で周囲との差が広がっていくのを感じ始めた。
「スクールカースト上位層のおしゃれな人たちは、コミュニケーション能力が高いので就職活動もどんどん決まって……。とくにデザインや映像系の人は、学生時代からフリーペーパーを発行したり、イベントを企画したりするなど活発で、就職でも大手広告代理店に受かって盛り上がっていました。
そういう勝ち組を横目に見ながら、親に『あと2年学費を払ってください』とお願いして。父からは、『修士課程の学費は、働き始めたら少しずつでいいから返すように』と言われました」