午後の早い時間にはジンが合う
窓の向こうはまだ明るい。なんと言っても午後2時だ
2月某日の午後2時過ぎ。まだ先客のない店の、カウンターの中央に席をとった私は、ジンフィズを頼んだ。
「甘みには、銀座でとれるハチミツを使いますか、普通の砂糖にしますか」
もっともクラシカルなジンフィズがほしかった私は、普通の砂糖でつくってもらった。ほんのり甘く、ジンも香り、ソーダの泡が爽快な、何とも言えず、おいしい1杯が供された。
これだけのために来たと言ってもいい。そんな気分でいるところに、飲み友ケンちゃんが駆け付けて、この店の名物のひとつ、「前割り」を注文した。ウイスキーをミネラルウォーターで割り、5日から14日ほど馴染ませておいたもの。ボトルごと冷やしてあるから、氷なしでいただく、独特の水割り、ということになる。この日は、タリスカーとバルヴェニーという2本のシングルモルトが用意されていて、私はケンちゃんに、まずは口当たりの柔らかいバルヴェニーをおすすめした。
「ああ、これ、うまい、軽いし、すぐ飲めちゃいますね」
ケンちゃん、ひと口飲んで、相好を崩した。わかる、わかる。この前割り、うまいんだ。
この店が初めてという人を、何人かお連れしたけれど、みなさん一様に、前割りに感動し、あっという間に1杯を飲み干す。どうやらケンちゃんもそんな感じなので、私も最初のジンフィズをさっさと片づけて、ギムレットを頼んだ。午後、早い時間帯に、ジンはよく合うような気がしている。
ジンフィズの次はギムレット
名店で磨いた技術が光るギムレット