運び屋の少女ニャアン(c)創通・サンライズ
“ネタバレなし”が新鮮だった
もともとZ世代はネタバレに直面しやすい環境を生きているようだ。若者研究の第一人者で「Z世代」の名付け親でもある芝浦工業大学デザイン工学部UXコース教授の原田曜平さんが語る。
「そもそも今はTikTokやYouTubeのコンテンツが膨大にあり過ぎるんです。普通にTikTokを見ていたら突然ドラマのネタバレが流れるなんて日常茶飯事で、今の子たちは“ネタバレ慣れ”している面があります。『ジークアクス』もよく探せばネタバレもあったでしょうが、少なくとも表面上はそれほどネタバレがなかったことはZ世代にとって新鮮だったかもしれません。
とにかく今はコンテンツが多すぎて、さばくのが大変です。だから若い世代にはネタバレが大きな武器になっている。例えば今はZ世代の間ではK-POPが爆発的人気ですが、中にはK-POPに詳しくない学生もいます。そういう子たちはNJZ(NewJeans)のTikTokのショート動画で裏話などを学んで友人たちとの人間関係を築くことに利用しています」
電車内を眺めたり、通りを歩いたりしていても、スマホから片時も目を離さない人が目立つ。老若男女を問わず溢れる情報を懸命に追っているような姿が印象に残るが、日常的に「ネタバレ慣れ」しているZ世代にも、「他の人はネタバレせず作品を楽しんでほしい」という純粋な気持ちはあるようだ。
20代の女子大学生・Dさんが語る。
「同世代の中でも、『好きな作品の楽しみを守りたい』と言う気持ちからネタバレを避けている人が多いよう感じます。他の人にもその作品を楽しんでほしいから、みんなネタバレ禁止を守るし、そんな中でネタバレする人に対して厳しい風当たりがあるのではないでしょうか。今はSNSなどネットの普及でいろいろな情報に簡単にアクセスできるからこそ、“誰かの楽しみを奪うネタバレはやめてほしい”という気持ちが強くなっています」
原田さんは「今の子たちはネタバレについて結構センシティブです」とも語る。
「例えば今はNetflixのドラマ『イカゲーム』シリーズがすごく流行っていて、若い子たちの会話には必ず出てきます。でも若い子たちは、最初に『見た? 見てない?』と聞いて、相手が『見てない』と答えると、『じゃあ言わない方がいいか』と相手を気遣う。『ジークアクス』にそこまでの全体的な熱量があったかどうかはわかりませんが、タイパやコスパを重視するZ世代の中にも、ネタバレへの気遣いがあることは間違いありません」