「隣席ガチャ」を恐れる人も
東京都在住のSさん(40代男性)は、海外で長距離バスをよく利用してきたため、夜行バスにも抵抗がなく、20代の頃、関西での単身赴任中は頻繁に使っていた。しかしある時から、「隣に知らない人がいるのが気になるようになった」という。何があったのか。
「夜行バスはお金も時間も節約できるし、もともと長距離バスが好きだったので、むしろ自分は夜行バスに向いていると思っていました。でもある時、隣り合わせになった乗客の男性が、ものすごく貧乏ゆすりをするタイプで……。気にしないようにしようと思って視界に入れないようにしたり、音楽を聴いたりしても、微妙な振動が伝わってきて、ものすごくイライラした時間を過ごしてしまったんです」
隣の人を選べないのが夜行バス。その後もSさんは隣人にも悩まされた。
「イビキをかく人は珍しくないですし、靴を脱いだ時の足のニオイ問題もありました。もちろん自分だって誰かの不快な原因になっているかもしれないですし、お互い様ですよね。ただ決定打は、何かゲームをしながらずっと独り言を言っている人でした……。一睡もできず朝を迎えた時の疲労感がすごかった。“隣席ガチャ”がちょっとトラウマになりました。
若い頃は気にならなかったのですが、年齢を重ねると、夜は気持ちも体も休めたいのに、隣で誰かが活動していると、ぜんぜん休めない。毎回ではありませんが、安さをとるか、そうした隣席ガチャのリスクを取るか。最近はリスクを取りたくないので、あまり使わなくなりました」(Sさん)
ただし、Sさんは「夜、高速道路を走るバス移動は好きなので、たまに乗りたくなる」といい、「座席が広かったり、個室感があったりするラグジュアリーな高速バスには興味がある」とも。
お財布だけでなく、身体との相談も必要な夜行バス。それぞれの思い出があるようだ。