*13:07JST KaizenPF Research Memo(7):生成AIを生かした機能開発とクラウド収益の拡大を図る
■Kaizen Platform<4170>の成長戦略
1. 生成AIを活用した機能開発とクラウド収益拡大を推進
DX市場は、大企業を中心とする業務のデジタル化・非対面化の進展により、市場拡大が今後加速する見込みである。こうした事業環境を背景に、中長期的な目標として営業利益率15%以上を掲げている。
成長戦略としては、DX市場の中でも特に非対面ニーズが高く成長性も高いマーケティング・カスタマーサービス分野をコアターゲットとして、グループシナジーやクロスセル・アップセル戦略により、大企業向けを中心にリカーリング売上の拡大とARPU向上を加速する方針だ。顧客企業にとってDXの最大のボトルネックは人材不足だが、同社にはプラットフォーム上で専門スキルを持った12,000人超のグロースハッカーネットワークを構築している強みがある。
また今後はChatGPTやGPT-4など生成AIを活用したソリューションを提供していく。2024年3月に生成AIを活用したUX改善の新メニュー「KAIZEN AI-UX」をリリースしたほか、同年11月にUX改善の技術基盤である「KAIZEN ENGINE」をアップデート、2025年1月に生成AIの実用化に向けた新たなアプローチとして「KAIZEN STUDIO」を設立するなど、成長する市場におけるポジションをより強固なものにするため生成AIの活用を加速している。このような生成AIを活用した機能開発を従量課金で提供することによりクラウド収益の成長を目指し、さらにクラウド収益の売上構成比を高めることで、より収益性の高い事業構造へ転換する方針だ。
顧客の課題に合わせて提供サービスを再編・拡充するためM&A・アライアンスも積極活用する。アライアンスとしては、2021年6月にアドバンテッジアドバイザーズ成長支援投資事業有限責任組合に出資した。同ファンドの投資先企業に対して売上成長をもたらすDX支援を行うとともに、新たなビジネスモデルやサービスの創出にもつなげる。2023年6月には電通グループ<4324>12社で構成する電通B2Bイニシアティブと共同で、BtoB企業特化型のフォーム改善施策「B2Bグローススイッチトライアル」の提供を開始した。2024年7月には、エン・ジャパン<4849>のグループ会社でセールス活動全般のコンサルティングや支援を展開するエンSX(株)と、BtoB企業のセールス&マーケティングの高度化支援に向けて協業した。
当面は内部留保の充実図る
2. 株主還元策
株主還元については、株主に対する利益還元を経営上の重要課題の1つとして位置付けているが、創業して間もないことから、財務体質強化や事業拡大のための内部留保の充実等を図り、事業拡大のための投資に充当していくことが株主に対する最大の利益還元につながると考えている。このため創業以来配当は実施しておらず、今後も当面の間は内部留保の充実を図る方針である。また、将来的には株主に対して安定的かつ継続的な利益還元を実施する方針だが、現時点において配当実施の可能性及びその実施時期等については未定としている。
サステナビリティ経営
3. サステナビリティ経営
同社はサステナビリティ経営についてマテリアリティを公表していないが、DX支援事業を通じてペーパーレス推進やCO2削減などの社会課題解決に貢献する方針である。
また同社は事業展開において、昨今重要性を増しているアクセシビリティ(accessibility=利用しやすさ)の向上推進も重視している。デジタル庁が掲げる「人にやさしいデジタル社会の実現」やSDGsの流れもあいまって、これまで国や自治体のみが義務化されていたWebサイト等のアクセシビリティへの合理的配慮が、2021年6月の障害者差別解消法改正によって民間事業者にも義務化された。
しかしDX対応と同様に、ここでも多くの企業にとってリソースの壁(ノウハウや人材の不足)が課題となっていた。同社は2022年1月に、アクセシビリティに関して豊富なノウハウを持つ子会社ディーゼロとともに、アクセシビリティ専門エンジニアやWebサイト改善専門家をグループ内に持つ強みを生かして、より多くの企業のWebアクセシビリティ向上に向けて、課題の抽出、レポートによる診断、必要に応じた課題の解決までトータルに支援するサービスの提供を開始した。また2024年6月にはディーゼロがアクセシビリティに関して、制作者のためのコーディングガイドラインを公開した。さらに2025年1月には東証プライム市場の英文開示義務化に先駆けて、同社のUX・AI技術とディーゼロのIRサイト支援ノウハウを組み合わせ、IR活動のグローバル化を支援するパッケージの提供を開始した。このように、Web制作を行うすべての制作者が利用できる様々な環境やツールを順次提供していくことで、誰一人取り残さないウェブの実現を支援する方針である。
ARPU向上とクラウド収益拡大の進捗状況に注目
4. 弊社の視点
同社は、グロースハッカーネットワークを活用した独自のビジネスモデルを特徴・強みとしており、市場競争力は高い。直近の業績推移を見ると伸び悩み感が否めないものの、これは成長に向けた先行投資のほか、子会社ハイウェルの事業構造改革やグロースにおけるインシデント発生といった一時的要因によるものであり、一方ではクロスセル・アップセル戦略により、大企業向けを中心にリカーリング売上の拡大とARPU向上が着実に進展している。今後はクラウド収益の売上構成比を高めることで、より収益性の高い事業構造への転換を目指す方針であり、ARPU向上とクラウド収益拡大の進捗状況に注目したい。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
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