*12:52JST 三菱総合研究所:総合シンクタンクグループ、2030年度に売上高2,000億円規模を目指す
三菱総合研究所<3636>は、総合シンクタンクグループ。経済・ITから科学技術まで社会課題解決を目指している。調査研究・分析予測・制度設計を行うシンクタンク機能、経営戦略・IT活用戦略立案を行うコンサルティング機能に加えて、システム開発・運用・アウトソーシングを行うITソリューション機能も有している。セグメントごとに競合は存在するが、同社は総合シンクタンクを核にしながらもITサービスを組み合わせているユニークな企業となる。
セグメントは、シンクタンク・コンサルティングサービス(TTC)とITサービス(ITS)に分かれている。2024年9月期の売上高構成比は、TTCが39.4%、ITSが60.6%。TTCの更なる顧客業種別内訳は官公庁向け27.0%、金融・カード向け2.1%、一般産業向け10.3%、ITSは金融・カード向け43.2%、一般産業向け16.6%、官公庁向け0.8%となっている。TTC向けでは官公庁の実績とカバー範囲の広さ、ITSでは三菱グループを中心とした金融・カードの実績や高信頼・堅牢なシステム開発が強みとなっている。また、多様で専門性の高い人財を確保しており、研究員の3/4は自然科学系、75%が修士以上となっている。
2025年9月期第1四半期(1Q)の売上高は27,706百万円(前年同期比0.1%増)、営業利益は1,480百万円(同27.3%減)で着地した。TTCは、電力・エネルギー・運輸関連の一般産業業向け案件等の伸長で官公庁向けの減少を打ち返しており、売上・営業利益ともほぼ前同並み。受注高は官公庁の遅れを一般産業向けの増加がカバーした一方で、官公庁大型案件のはく落により受注残高が減少。ただ、外部流出分減を除いて実質は4億円の減少にとどまる。一方、ITSは、金融・カード向け減少を一般産業・公共向けシステム更改案件等でカバーしたことで、売上高は前年同期並み。受注高・受注残高ともに主に金融・カードがけん引して前年同期比で増加した。ただ、金融・カード向け不採算案件の発生等により減益となった。今後は受注活動を強化してピークに向けた積み上がりを注視しており、1Q時点での業績予想には変更なし。通期の売上高は128,000百万円(前期比11.0%増)、営業利益は8,300百万円(同17.5%増)を見込んでいる。
同社は、今後もTTCとITSの強みの掛け合わせで独自の価値を提供する企業グループとして2030年度に売上高2,000億円規模を目指していく。長期的目標達成に向けてまずは「中計2026」を掲げており、2026年9月期売上高1350億円、営業利益120億円、ROE12%を計画として開示。合わせて事業ポートフォリオと事業規模イメージを細分化しており、社会潮流の形成を図る自主事業のシンクタンク事業と、政策・制度知見起点の公共や民間向けの社会・公共イノベーション事業、経営課題起点の民間向けのデジタルイノベーション事業、金融システム知見起点の金融機関向けの金融システムイノベーション事業と4つの事業軸を設定している。2026年9月期の事業規模では、社会・公共イノベーション事業で529億円(2024年9月期実績396億円)、デジタルイノベーション事業で350億円(同279億円)、金融システムイノベーション事業で469億円(同487億円)を見込んでいる。社会公共イノベーション事業では、「都市・インフラ・モビリティ」「ヘルスケア・人材」「エネルギー・循環・サステナビリティ」や「テクノロジー」(宇宙・海洋、経済安保等)領域のresearchコンサルなどが成長をけん引していく。デジタルイノベーション事業ではデータ分析(DA)やAIシステム開発、DXコンサルなどの成長が見込まれている。
資本政策では、配分原資から85%程度を投資に積極活用する。出資やM&Aを検討しつつ、ソフトウェア投資や設備維持更新、人的投資に振り分けて成長を図っていく。また、株主還元では、継続的な安定配当を基本に業績や将来の資金需要、財務健全性のバランス等も総合的に勘案し決定するようで、配当性向40%を目安としている。引き続き、案件の受注状況を確認しつつ今後の動向に注目しておきたい。
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