世界のFX取引(外国為替証拠金取引)に占める日本の比率は40%と言われていましたが、最近の調べでは57%までさらに伸びているもようです。日本の個人投資家層の市場占有率は、尋常ではないレベルにまで達してきています。
市場占有率が高いということは、日本の個人投資家が市場への影響度も高くなるということになります。
日本の個人投資家層の市場占有率が高い、と見る根拠は?
最近の相場を見てみると、ドル/円にしても大方のクロス円にしても、今年の2月初頭から、レンジ相場が続いています。日本の個人投資家層の得意とするトレーディングスタイルは「戻り売り」「押し目買い」で、レンジ相場に適合した、あるいはレンジ相場を形成するトレーディングです。
市場占有率が57%もあって、しかも同一民族として思考の同一性のある日本人トレーダーがお互いに声を掛けることもなく、〝あうんの呼吸〟で同じことをする可能性は高く、2月初頭からのレンジ相場もそのせいではないかと考えます。
その他にも例を挙げますと、ドル/円で104.00前後まで買い上げられた時、104円より上に、数えきれないほどの戻り売りオーダーが並んでいる気配を感じたことがありましたが、輸出企業のドル売りオーダーのみならず、たぶん、戻り売りと見た個人トレーダーのオーダーが群れをなして並んだためではないかと思われます。
こうした日本の個人投資家層の市場占有率の高さが、市場の活性化の妨げになる危険性があります。それは日本の個人投資家層が従来通り「戻り売り」「押し目買い」というトレーディングスタイルを繰り返すと、マーケットはレンジ相場となり、極端な話、動きをなくしたマーケットになってしまう可能性があるということです。
マーケットが活性化するためには、高値を買い上げ、安値を売り下げてレンジをブレイクする攻めのトレーディングスタイルになることも必要となるのです。
過去にもあった日本の個人投資家層の市場支配
過去にも日本の個人投資家層が、市場を支配した時期がありました。2005年の9月からの3か月間、日本の個人投資家層はキャリートレード(高金利通貨買い低金利通貨売り)で大儲けしました。
ドル/円やクロス円は一本調子に上がったため、逆にプロはこの上げに乗り切れず、どこかで調整があるとばかりに、売り上がっては締め上げられて万歳となり、「個人投資家層がプロに勝った」とまで新聞に報じられていました。
12月に入ってもマーケットの熱気は「この相場はまだ続く」と鼻息荒い状況でした。 そんなところに米貿易収支の発表があり、収支は予想より悪い結果が発表されました。 その当時でも、米貿易収支はもうそれほど注目を浴びない指標でしたが、この時の売りはいつもとは違う強烈なもので、ドル/円で5円強急落しました。
その後、結局9月から上げたクロス円の約13円もの利益はすべて返上した格好となり、本邦勢は総崩れとなりました。あとになって聞いたところによりますと、9月にドル/円のロングをしこんだシカゴ筋が、貿易収支の発表を利益確定のタイミングに使ったということでした。
確かに、今の日本の個人投資家層の市場占有率は、2005年当時とは比べものにならないほど高くなってはいますが、個人のFXだけでなく外国為替市場全体におけるビッグプレーヤーは、まだまだ世界中にはいますので、くれぐれも、自分たちが市場を支配していると思うことは禁物です。相場に謙虚であることが、マーケットで長生きする秘訣です。