この状況は、19世紀後半のアメリカの西部開拓時代とも似ている。西部開拓時代はボストンやニューヨークなどの東部の都市に安住しないで危険な西部に向かい、金鉱を発見したり、荒野を切り開いて牧場や農場を作ったりしたパイオニアが大きな富を手に入れた。つまり「リスクを取って先に動いた人」だけが莫大な利益を得たのである。
いま、かつての西部に匹敵するのは、パケット通信網が世界を覆ったことによって出現した「見えない新大陸(THE INVISIBLE CON-TINENT)」だ。私は2001年に上梓した『新・資本論』(東洋経済新報社)の中で、21世紀の富は「実体経済」「ボーダレス経済」「サイバー経済」「マルチプル経済」という四つの経済空間で構成される見えない新大陸で創出されると予測した。そして、この新大陸を制するのは、西部開拓と同じく先に動いて四つの経済大陸に杭を打った人たちだ、と述べた。
実際、現在の第4次産業革命では、リスクを取って先に動いた人たちがAIやビッグデータ、IoTを駆使して見えない新大陸を懸命に開拓している。日本企業は第2次産業革命と同じく、まだ「太平の眠り」を貪っている状況だが、注目企業もいくつか現われ始めている。
たとえば、いま世界でフィンテック(※)が最も進んでいるのは、欧米でもアジアでもなくアフリカである。
【※フィンテック/スマートフォンを使った決済や資産運用、AIやビッグデータなどを駆使した金融サービス】