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【水上紀行の為替相場の本質】 スイスショックに見る、パニック相場の法則

 それは四方を海という天然の要害に囲まれ、しかも同質社会に生きてきたことによるところが大きいと思います。

 ひとたび事が起きた時、どう対応するのかというトレーニングは、残念ながらよくできていません。ひとたび海外に出て少し長く現地に滞在すると、外国人だからということだけで、現地当局の尾行にあったり、電話を盗聴されたり、果てはテロ組織に誘拐されたり、ということは決してテレビの中だけの話ではありません。

 エボラ出血熱のような疫病に感染する可能性も、日本国内に比べれば、海外のほうが何百倍も何千倍も高いことは言うまでもありません。

 優しい空気に包まれた日本だけに、リスクに対してはもっと意識的に慎重になるべきですし、日々のトレーディングにおいても今申し上げたようなリスクを含めて、ひとたびリスクが発生した時、いかに行動するかを事前に考えておかなければなりません。

 海や山で遭難した時のそれぞれの専門家のアドバイスは、海で溺れて沈んだら(海面は暗く見えるから)暗い方へ泳いでいけ、山で道に迷ったら(全体が見渡せる)山の頂上を目指して行けと言います。

 緊急時のリスクを逃れる方法は、ある意味意外でありながら、動物的〝勘〟に近いものがあります。そして、私が思う相場におけるベストなリスク対応は、なにしろまずは損得に未練を残さず、すっぱりとスクエア(ノーポジ)にすることだと思っています。

パニックボーイ

 自分自身のメンタル自体を鍛えることも必要です。パニックに陥りやすい人のことを、和製英語かもしれませんが「パニックボーイ」と呼びます。トレーディングの世界では、常に冷静さを要求されますから、パニックボーイでは困ります。ただ、パニックボーイから脱することは可能です。

 ひとつの手段としては、トレーディングの数をこなすことです。いろいろな局面を経験することで、場面場面に慣れるということが大事です。また、気持ちの上で恐怖が先に立ち、冷静に対応ができないことも、パニックになる原因です。

 腹を決めて、敵のふところに飛び込んでやるぐらいのつもりで、トレーディングする必要があります。

 酒田五法にも「振り下す刃の下ぞ地獄、飛び込んでみよ。極楽もあり」という言葉がありますが、捨て身で飛び込んでこそ先が開けるということだと思います。

 そして、最後に言えることは、自分だけが怖いのではなく、皆多かれ少なかれ恐怖を感じながらトレーディングをしていると思います。

 決して、自分だけが怖いわけではないということです。
(2015年1月30日執筆)
※「マネーポスト」2015年春号に掲載

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