朝鮮半島の緊張が高まる中、日経平均株価は下落を続けたが、その一方で、市場関係者の間では「有事によって経済が上向く可能性」も囁かれている。有事が引き起こす影響で見逃せないのは為替変動だ。株式評論家の植木靖男氏はこうみている。
「シリア情勢の緊迫を含め、各地にリスク要因があることを踏まえると、『有事の円買い』が進んで、為替は円高に動くと考えられます。
円高は、輸出企業にマイナスというイメージが強いが、有事による外需が生まれていれば、相殺される可能性がある。そうなると、食料品をはじめ様々な物資を輸入に頼る日本にとって、円高はプラスに働く側面が強くなります」
国際関係も大きく変わり得る。武者リサーチ代表・武者陵司氏はこういう。
「朝鮮有事は、大きな構図としては米中対立の深刻化という文脈で理解すべきもの。対中融和のオバマ政権時代に比べて、日米の距離感は相対的に近くなっているし、紛争の危機が高まればよりその傾向は強くなるでしょう。
これまで、日本の産業の“出る杭”は米国に潰されてきた。たとえば1990年代以降、日本の半導体事業は世界的なプレゼンスが大きくなりすぎ、米国からのバッシングを受けて大打撃を被った。そうした外圧が弱まることは、日本の様々な産業にとって結果的にプラスにはたらく」
※週刊ポスト2017年4月28日号