投資未経験の人にとっては、職場が選んだ金融機関のアドバイスを受けて始められるのは安心感があるだろうし、投資の第一歩を踏み出しやすくなるだろう。提供される金融商品も、初心者が投資しやすいバランスファンドやコストの安いインデックスファンドなどに絞り込まれているケースも多く、選びやすいといえる。
顧客の高齢化に悩む地銀の生き残り策としても
金融機関にとっても、これまであまり接点がなかった現役世代の資産形成層に職場単位で効率良くアプローチできる。大手金融機関はもちろん、顧客の高齢化と相続による資金流出に悩む地銀などでも、力を入れる金融機関が増えている。
初心者にとっては使いやすい職場積立NISAだが、自分でリスクを判断して個別株や投資信託に投資するスキルを持つ人にとっては特段のメリットはない。投資したい金融商品がある金融機関を選んでNISA口座を開設するほうが有利だろう。
だが、例外もある。企業側が従業員の職場積立NISA口座に資金を援助する例が報じられており、こうしたケースが増えれば職場積立NISAを選択するメリットは大きくなるだろう。
「貯蓄から投資へ」の流れは、これまで投資と縁の無かった層をどれだけ引き込めるかにかかっている。2016年3月末時点で、税制メリットのまったくない職場単位の一般財形貯蓄だけでも約11兆円、利子が非課税となる住宅や年金財形も合わせると約16兆円の資金が眠っている。職場積立NISAが普及すれば、これらの財形マネーが一気に投資へと向かう可能性もあり、株式市場にちょっとしたインパクトを与える存在になるかもしれない。
文■森田悦子(ライター・ファイナンシャルプランナー)