Aさんによると、アポイントにこぎつけるのも一苦労だというが、それ以上に過酷だというのが“呼び出し”。苦笑しながらエピソードを語る。
「本郷(東京・文京区)が病院密集地帯で、医療機器の関連会社も多いということから、業界では“本郷村”と呼ばれているのですが、何かトラブルがあれば、たとえ深夜であっても本郷村に急行します。私は熱で寝込んでいたときでも駆けつけましたし、デートの際にも呼び出される不安から臓器の模型や資料を持ち歩いていました。同僚たちも新婚初夜やハネムーンだろうが関係ないと覚悟しているようです。とにかく、休みの日だからといって、電話をとらないのはアウトなんです……」
これまでの話を聞く限り、かなり過酷に思えるが、入れ替わりはどうなのか。
「確かに離職率は高い方だとは思います。合わない人は合わないでしょう。でも、数年続けて医療に携わっているという使命感に目覚めると、辞めない人が意外に多い業界でもあります。命を救うべく必死で戦う先生を見ていると、自分たちが医療機器を通して先生を助けることで、間接的にでも命を救うメンバーの一員であると自覚して、奮起するんです。『先生はこんなオペやるんだ。俺たちもがんばろうぜ!』って。いい大人たちが青春している感じです」
終始、熱く語ってくれたAさん。やりがいと自分の存在意義を見出すことができれば、一見過酷に思える仕事も耐えられるということなのだろう。