中国共産党中央委員会政治局は先週25日、国家金融安全維持に関する第40回集団学習会を開いたが、これが市場の大きな注目を集めた。習近平国家主席は、「金融安全は国家安全の重要な組成部分であり、経済の安定的、健康的発展の重要な基礎となる」と発言。金融改革の加速、監督管理の強化、リスクの処置、幹部の金融業務能力の向上、共産党による金融業務に対する指導強化などを指示している。
この問題のインパクトは大きく、中国人民銀行は会議の2日後、ホームページ上で、「人民銀行共産党委員会は専門会議を開き、習近平氏の重要講話の精神を徹底的に迅速に伝えた」とわざわざ公表している。
共産党は景気を拡大させることよりも、投機を拡大させないことに重点を置いているようにみられる。投機の抑制は資産価格だけでなく、一部の川上製品に対しても向けられている。企業家心理は冷え込み、受注、生産が影響を受けている。
今年秋に行われる共産党大会では次の5年間の人事を決める重要な会議となる。日本のマスコミでは、現政権への不満が出ないよう共産党が景気を拡大させるような政策を打ち出すといった意見が多くみられる。しかし、現状ではそのような状況ではなさそうだ。
もう少し踏み込んで考えてみると、共産党は、地政学的リスクであったり、EU、アメリカの経済システムの変化であったり、何か大きなリスク要因を感じているのかもしれない。
日本人投資家にとっても中国共産党の警戒感は気になるところである。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサル ティングなどを行うTS・チャイナ・リサーチ代表。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」、メルマガ「週刊中国株投資戦略レポート」も展開中。