その構図は、企業のメインバンクの大きなメリットでもある。「毎年1000人の社員が入社するような企業なら、ほぼ自動的に同じ数の新規口座を獲得できる。しかもそれが数十年にわたって継続する」(メガバンクのリテール=個人営業担当者)というわけだ。
だが、そうした関係は「あくまで“在職中のしがらみ”と割り切るべき」と菅井氏は語る。
「個人のメインバンクは家賃や住宅ローン、光熱費の自動引き落とし口座などになっているので、切り替えるとなるといろいろと手続きが煩雑です。しかし、定年を迎えた(控えた)世代であれば、口座を見直すことを勧めます。退職によって生活スタイルが変われば、それとともに家計のお金の流れも変わります。そうした時に、会社から離れた一個人と向き合ってくれる金融機関を探すことで、老後マネーを有効活用できる可能性が見えてくるからです」
実際、退職金や年金運用を謳う定期預金商品を見ると、メガバンクよりも、地方銀行や信用金庫・信用組合などのほうが高金利商品も多い。在職中のしがらみから外れることで、様々な選択肢が見えてくるのである。
※週刊ポスト2017年5月19日号