ところで、出張に必要な旅費は使用主の負担です。大抵は旅費規程などで金額が決まることになっており、特別な事情がない限りは、その範囲で出張することが労働者の義務といえます。その労働者に対し、交通機関などに正規料金からの値引きを求める義務を課していなければ、マイルを私的に使っても契約違反にはなりません。
もっとも、ポイントは値引きであると公取委が言明し、電子マネーに類似した価値があるので、値引き分を返納したり、マイレージの換算分を申告する義務が少なくとも道義的にはあると使用主からいわれるかもしれません。
その場合でも、職場でマイレージカードが利用されているのであれば、ポイント制は今や常識ですから、ポイントやマイルの申告などの格別な手当を定めていない使用主は、労働者の使用を認めているといえます。
逆に、誰も使っていないのであれば、元は公費ですし、マイルを申告するか、マイレージカードの利用を控えたほうが無難です。
【弁護士プロフィール】竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。
※週刊ポスト2017年5月19日号