ただし、再婚の通知義務がない以上、元奥さんが養育費の支払いを受け続けても債務不履行ではありません。これは具体的な養育費の内容を夫婦間の協議で定めた場合でも、いったん定められた具体的扶養義務の内容は、再協議又は養育費を変更する審判を経るまで変更されないと解されるからです。
家庭裁判所は「(扶養額について)協議または審判があった後事情に変更を生じたとき」に変更することを認めています(民法880条)。養育費の額を決めたときに、予想されていなかった事情が発生した場合に変更が認められるのです。
離婚に際し、養育費を決めたときに再婚が予想され、そのことを前提にした額を決定した場合は別ですが、普通であれば再婚は前提とされていませんから、一方が再婚すれば事情変更といえます。
あなたの場合も同じでしょう。元奥さんの再婚相手の家庭環境や養育費の負担状態も勘案され、金額が変更される可能性がありますので、減額を求める調停を申し立てることをお勧めします。
【弁護士プロフィール】竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。
※週刊ポスト2017年6月2日号