運用というと、儲けることばかり考えがちですが、私の知っている運用上手なお金持ちは決してそうではありません。
まず自分が管理できるリスクを定量化し、数字で把握することに長けています。たとえば1000万円の元手があって、たとえ儲かりそうな投資先を見つけたとしても、「50%の損失があり得るので100万円までにしておく」などと考え、下がった時のリスク管理から発想します。
あくまで自分の身の丈に合った運用を心がけており、そのために資金管理の方法も徹底しています。
自ら抱えられるリスク量を抑えるために、投資対象を分散するのはもちろん、毎月一定額を積立投資するドルコスト平均法で投資する期間を分散して、高値掴みを避けようとするなど、「転ばぬ先の杖」をいくつも用意しているのです。
車の運転でたとえると、スピードを出すことばかり考えて事故に遭って大怪我するのを未然に防ぐために、リスク管理というブレーキの使い方を覚え、資金管理というエアバッグをはじめ安全装備で固めているようなものです。
そこまでしっかりコントロールできていれば、運用によってもたらされる成果は「時の運」ではなくなります。
さらにいえば、お金持ちは常に「相場が下がった時」のことを考えています。
87年のブラックマンデー以降、90年のバブル崩壊や97年のアジア通貨危機、06年のライブドアショック、08年のリーマンショックなど、10年に一度以上の頻度で経済危機に見舞われてきましたが、私の知るお金持ちはむしろチャンスと見て資金を投入し、資産を大きく殖やしてきました。
そのような“好機”を活かせたのも、日頃のリスク管理を前提とした運用の賜物です。
みなさんもぜひ、迫りくる「貧困化ニッポン」で「脱下流」を目指すために、しっかりと自助努力を続けてもらいたいものです。
※マネーポスト2017年夏号