その後、5月に入って、トランプ大統領は、インタビューで「適切な条件下であれば金正恩氏と会う」と、直接対談の可能性を示唆し、実際に5月8日、9日にノルウェーのオスロで米朝事務レベルの極秘会合を行なったことが判明した。
しかし、あくまで現時点はデタント(緊張緩和)の状況に移行したに過ぎない。ビクター・チャ氏の分析では、次に、緊張が高まるのは、6月25日の朝鮮戦争の開戦記念日で、この日に、核実験を行なう可能性があるという。
ただし、核実験をしても、意図的に失敗させることが考えられ、その場合は、国内への示威行動と判断して、ただちに米国が軍事行動を起こすことはない。米国が恐れているのは、以前にも成功している核実験ではなく、北朝鮮から米国本土まで届くICBMが開発されることだからだ。軍事パレードで公開されたICBMは、3段目のミサイル部分がなく、米国本土が射程圏に入らないと分析されている。軍事行動に入るのは、3段目が開発された段階だという。
それがいつ頃なのかは、当然ながら窺い知れない。だが、その兆候について米ランド研究所のアナリストは、「米軍が北朝鮮のICBM完成の情報を入手した場合は、速やかに軍事オプションを行使するだろう。その場合は、ジェームズ・マティス米国防長官が、日本と韓国を訪れ、自らがそれぞれに在留する米軍に指示を出す」と語る。
いずれにしても、6月25日に向けて、地政学リスクが再び高まる可能性が高い。北朝鮮の動向からは目が離せない。
※マネーポスト2017年夏号