金融緩和は、アベノミクスの根幹です。しかも、日本経済はデフレ脱却を果たしたわけではありません。それなのに、この時期の金融引き締めは、まさに自殺行為に近いといえます。
実際、この金融引き締めに伴って、トランプ相場で昨年12月半ばには1ドル=120円近くまで円安に進んでいたのが、4月半ばには108円台まで円高が進むなど、円高基調が衰えを見せません。
円高がデフレをもたらすことはいうまでもありません。2月の消費者物価指数は、前年同月比プラス0.1%と、かろうじてプラスを維持しましたが、それも風前の灯です。値下げ競争に火が点き始めたからです。
コンビニ最大手のセブンイレブンは4月19日から、洗剤や歯磨き粉など日用品61品目を平均で5%値下げ。スーパー大手のイオンも、プライベートブランド商品に続き、ナショナルブランド商品239品目を平均10%程度となる値下げに踏み切っています。
イオンの岡田元也社長は値下げ発表会見で、「脱デフレは大いなるイリュージョン(幻想)だった」と断言しました。岡田社長は、感覚でそう発言したわけではありません。一部商品を限定的に値下げし、需要が大きく伸びた事実を確認したうえで発言しているのです。
消費者は確実に安いものを欲しがっています。アベノミクスによって経済全体は潤ったとはいえ、実質賃金は第2次安倍内閣発足当初より3.5%も減っているのだから当然です。
※マネーポスト2017年夏号