何より冷静に俯瞰すれば、米国経済自体は引き続き好調だ。住宅価格は上昇し、消費も堅調な推移を見せている。企業業績もグーグルの持ち株会社アルファベット、アップルやフェイスブックといった米IT企業を中心に好調で、それに伴って昨年来続いてきた半導体などの旺盛な需要が再び脚光を集めている。
日本企業もその恩恵を受け、輸出・ハイテク関連は好調。だが、そのなかでも不安材料は少なくない。例えば自動車だ。
米国の自動車ローン残高が警戒水域といえるほど積み上がっており、少なくともここからの買い余力は考えにくい。そうした状況が日本の自動車輸出にも影響を及ぼす可能性があり、部品メーカーも含めた自動車関連銘柄は日米ともに触りにくいテーマと考えた方がよさそうだ。
日本国内に目を向ければ、消費のもたつきも気がかりな材料といえる。
人手不足で雇用はよくなっていても、消費者物価指数の伸び率は鈍化しており、雇用増が消費にはつながっていない。足元では不景気時に売れ行きが高まるといわれる、もやしの売り上げも増加している。
また、ファミリーレストランなどで肉系メニューの売り上げが不調となるなど、節約志向の高まりが窺える。
まして昨年1年間でマネーの流通量は90兆円から100兆円に増え、そのうち43兆円はタンス預金とされる。消費に回さずに貯め込む傾向が強まっており、それらは再度のデフレ化を示唆しているのかもしれない。
もちろん日米ともに足元の景気は回復途上であり、腰折れを心配するほどではないが、そのように目を凝らせば不安材料もある、ということは頭に入れておいた方がよいだろう。
※マネーポスト2017年夏号