首都圏の新築マンション市況は低迷が続いているが、それでも好調に買われている物件は存在する。どうような特徴があるのか、不動産の市況調査を手がける東京カンテイ市場調査部の井出武・上席主任研究員が解説する。
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価格の高止まりと金利の先高感の影響で首都圏の新築マンション市況は低迷している。
このような状況の中で比較的好調に買われているのは、麻布、赤坂、青山の「3A」地区、広尾、千代田区「番町アドレス」の3億円以上の“スーパー億ション”と呼ばれる高額物件だ。
買っているのは、都心のブランド地区に狙いを定めて物色している投資家や富裕層。これら5エリアの物件は資産性が抜群に高いため、市況とは関係なく、よい物件が出てくれば高額でも買われるという特殊な事情がある。
都内ではこのほか、退職金を手にしたシニア層による戸建てからの買い替え需要が一部でみられる。1980年代のバブル期に郊外で戸建て団地が多く開発されたが、最寄り駅までバスで20分かかるような地域に戸建てを買った人たちが、交通の利便性が高い駅の近くのマンションを購入して住み替える動きも出ている。
では、一般のサラリーマンなど実需の中心層はどのような動きをしているのか。都内の新築物件は供給が絞られている上、ファミリー層にはなかなか手が出ない高価格水準で推移しているため、東京都周辺3県の物件に流れる傾向が強まっている。