中国経済に対する悲観論が再び台頭しているようだ。ムーディーズ・インベスターズ・サービスは5月24日、中国の格付けを「A1」に引き下げている。これは1989年以来、28年ぶりの引き下げである。実体経済における債務規模の拡大速度が速いこと、それに関連する改革措置の効果がみられないことなどを理由として挙げている。ちなみに、「A1」は日本と同じ格付けである。
これに対して、6月12日の人民日報は、現状の景気は安定しており、見通しも良いこと、イノベーションが進んでいることなどを指摘、反論している。
足元の景気は安定しており、基調は変わりない。4月の鉱工業生産、民間固定資産投資をはじめ、いくつかの主要指数では増加率が鈍化しているものの、その要因は前年同期の水準が高いなどテクニカルな要因によるところが大きい。就業者数は拡大、物価は安定、個人収入は増加、国際収支は改善しているなど、国民経済全体は引き続き安定成長が続いており、上向きつつある。4月のサービス業生産指数は8.1%増で鉱工業生産指数よりも1.6ポイント高い。サービス業の経済を牽引する力がさらに一歩高まっており、“三去一降一補(生産能力、不動産在庫、債務の過剰を取り去り、コストを引き下げ、経済の弱い部分を補強する)”は着実に進み、経済のレベルアップは勢いを増している。
中国経済は足元で安定しているだけではなく、今後の見通しも良い。現在の経済状態は新旧経済のエンジンが後退することによる膠着期にある。新しいエンジンが完全に古いエンジンを代替することはできないが、だからと言って経済が持続的に発展する力がないとは言えない。いくつかの点で急成長するところがあるが、そうしたところを見る限り、中国経済には大きな成長の余地があると感じられる。