今年秋の共産党大会に向けて中国は景気刺激策を打ち出しているといった見方をするメディアもあるが、足元の中国経済は、金融当局が厳しく金融レバレッジの縮小を進めており、金利は上昇傾向にある。景気はどちらかといえば、ブレーキが踏まれている状態である。銀行、保険、証券、不動産業界に対する監督管理が厳しくなっているので、資金が回りにくい。本土株式市場は安定しているが、理財商品、不動産市場などの投機的行動に対する取り締まりは今後、1~2か月の間、厳しい状態が続きそうだ。ただ、投機が沈静化すれば、PPP(官民一体)プロジェクトの拡大を推進力として、景気は持ち直すだろう。
長期的にはモバイルインターネット革命が新たな需要を切り開くだろう。5Gの登場、IoT革命の進展で、中国経済は長期的に安定成長を続けるとみている。中国関連(日本株)については、環境面では申し分ない。問題は、本土市場で競争力を保ち続けられるかどうかである。
日中間の貿易構造をみると、気になるのは輸出ではなく、輸入である。
輸出先トップは中国だが、全体の輸出に占める割合は19.1%に過ぎない。一方、輸入先トップも中国だが、全体の輸入に占める割合は23.6%もある。寄与度の高い順に示すと電算機類(周辺機器を含む)、石炭、音響映像機器(部品を含む)で、伸び率は順に+21.6%、+438.2%、+18.6%である。かつて日本が強かった分野でも輸入が多い。必ずしも、純然たる中国企業からの輸入とは限らないが、そのことは逆に日本の産業空洞化が深刻であることを示している。電算機類、音響映像機器まで中国で生産していては、日本の雇用は守れない。低所得のサービス業でいくら求人が増えても、全体として日本国民が豊かになっているとは言えない。