7月3日、香港では海外投資家が香港証券取引所を通じて中国本土の債券を売買できる「債券通」が始まった。海外投資家に対して、直接本土市場を開放するのではなく、香港証券取引所を窓口として、海外投資家の売買を明確に区別し、管理する方法で市場参入を認めている。
こうしたシステムは株式でも同様である。外国人個人投資家の取引は、上場銘柄の一部に限られ、1日の取引量には制限(市場全体の総額)がある。香港証券取引所が注文を受け、それを上海、深セン市場に繋ぐ仕組みである。外国人の注文を区別し、管理する方法で取引を認めている。機関投資家は海外適格機関投資家制度を利用して取引することもできるが、こちらの方法でも、窮屈な規制が存在する中、当局から厳しく監督管理される。
本土の投資家が海外に投資する場合も同様である。債券については売買できるのは機関投資家だけで、国内適格機関投資家制度を利用しなければならない。株式については、国内機関投資家制度を除けば、上海、深セン市場が窓口となる方法でしか海外株を買うことができない。しかも、買うことのできるのは一部の香港株のみである。
人民元通貨の動きを国家がコントロールするためには、どうしても、オフショア、オンショアで市場を区別して、分離しておかなければならない。そのためには、株式、債券などの金融取引も分離しておかなければならないのである。
金融市場はの自由化に伴うリスクは計り知れない
中国がかたくなに金融資本市場の完全自由化を拒むには理由がある。香港返還直後に発生したアジア通貨危機が最大の要因である。欧米機関投資家による“悪意のある投機”によって、タイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、韓国、香港などの金融市場は大きなダメージを受けた。一方で、一部の欧米機関投資家が巨額の利益をむさぼった。金融市場はまず、国家発展のために存在すると考える中国にとって、自由化に伴うリスクは計り知れない。