素晴らしき発注主については、某ネットメディア企業のA氏です。同氏は元々、上司から私をあてがわれたところから付き合いが始まりました。当時32歳だった私よりも4歳若い28歳でした。5月の初夏の時期に会ったのですが、私は暑かったため、短パン・サンダル・TシャツでA氏に会いに行きました。A氏の下には部下が1人。最初の打ち合わせの時、正直「けったいなヤツだな」と思ったそうですね。そりゃそうですよ。編集担当として外部から来た人間が短パン穿いてるんですよ!
そして、その2人と私とで仕事は開始しました。記事を出し続ける必要があったため、こちらの側もライターを拡充していきましたが、A氏は「中川さんが誰を雇おうが気にしませんので、すべてブラックボックスにしておいて構いませんよ。ただし、問題のある記事は極力出さないでくださいね(笑)」と言ってくれました。
こちらとしても、発注主が信用してくれているからには、なんとか良い結果を出さなくてはならない。となれば、こちらが外注するライターもキチンとした人物であらねばならない。そこで様々なツテを辿って発注したのがB氏とC氏です。B氏は私と同年齢で、C氏は私の2歳年下です。IT会社系のメディアで書くという、当時はあまりメジャーでない仕事であり、彼らも本来雑誌やカタログを中心としたライターです。
色々とネットの場合は制約があるんですよね。誰もが見られるだけに、批判を少しでも書けばエゴサーチによりクレームが寄せられる。事実誤認がなくとも、「こんなことをネットに書きやがって!」ということで激怒する人が出てくる。B氏とC氏からすると「なんでこんなに制約があるメディアでオレはライターをするの?」と思ったことでしょう。
アングラ雑誌で好き放題書く分においては、黙認されていたものが、ネットメディアではもはや黙認できるレベルではなくなってしまったのです。となれば、運営元のA氏と私は各所に謝罪に出向くことになりますが、A氏は謝罪が終わったら「はぁ…、無事解決できましたね…。飲みますか…」と二人反省会に誘ってくれます。正直謝罪というものは、精神衛生上、もっともよくないものです。誰か味方がいてほしい! そう思うことばかりなわけで、実際に謝罪した後は、A氏と私と2人で傷を舐め合い「注意深く記事作りましょうね……」と確認し合うのでした。