ここで大事なのは、思っているような値段で売れなくても、高望みしないことだ。空家・空地管理センターの代表理事・上田真一さんは、こう語る。
「実際、3000万円で購入した実家の売却価格を200万円と査定され、さらに解体費用が500万円かかるケースがありました。売って収入を得るはずが、300万円のマイナスとなるため、“だったら売りたくない”とあきらめてしまう。こういうかたが結構多いんです」(上田さん)
しかし、マイナスが出ようと、買いたい人がいるなら売るべきだという。今後は売りたくても売れなくなり、そうなると、税金や維持管理費で、300万円くらいあっという間に飛んでしまうからだ。将来に負担を残さないためにも“譲渡する”ことが大切なのだ。
物納・寄付・相続放棄は現実的に無理がある
売る以外に所有権を譲渡する方法としては「物納」「寄付」「相続放棄」もある。
「物納」が認められるのは、相続資産はあるが現金がない場合。つまり、破産寸前でないと受け付けてもらえない。
一方「寄付」は、立地や物件がよく、市町村側が積極活用したい物件に限る。無償譲渡の建物を公共用に活用する例もあるが、個人の寄付申し出に対応することはまずない。