「厳しい状況は親からの『仕送り』の減少にも表われています」と指摘するのは、ファイナンシャルプランナーの藤川太氏(家計の見直し相談センター)。
全国大学生活協同組合連合会がまとめた「学生生活実態調査」では、下宿生の親からの仕送りは7万610円(2016年)。1990~2000年にかけて月10万円以上の仕送りを受けていた学生が6割を超えていたが、その割合は年々減り、今や29.2%と半減。代わって月5万~10万円の仕送りが38.8%と最も多い割合となっている。サラリーマンの平均給与が1997年をピークに減少するなか、仕送りを削らざるを得ない家庭がそれだけ増えているのである。
その一方で、下宿生の生活費は平均12万円弱でほぼ変わっていないことを考えると、今や奨学金やバイトで賄わなければ生活できない大学生が過半を占めているといえるだろう。
「かつてバブル期に学生だった(いまの40代後半~50代)世代からすれば、まさに隔世の感があると思います。当時は学生ですらバブルの恩恵を受け、ろくにバイトをしないで遊ぶこともできたし、大学は“レジャーランド”と呼ばれていました。
それも今や昔の話。現在、アベノミクスによる景気拡大局面はあのバブル期を超えたといわれていますが、その裏では奨学金をもらってバイトに励んでようやく大学に通えている学生が少なくない。子どもの貧困問題は相当深刻といえるでしょう」(藤川氏)
振り返れば、小泉政権下の2002~2008年にかけて、あの高度経済成長期の「いざなぎ景気」を超える戦後最長の景気拡大局面になったといわれるが、あの時も「実感なき景気回復」といわれた。今回の景気拡大はバブル期を超えて戦後3番目の長さとされるが、こと子どもを取り巻く環境を考えれば、過去の景気拡大局面とは比べものにならぬほど冷え込んでいるとしかいいようがない。