温かみのある木造りの店内に入ると、すぐに、食欲をそそる香ばしいにおいに鼻孔が刺激される。店内はカップルやサラリーマン、女子会のグループ、子連れの家族などで満席である。皆、大ぶりの焼き鳥を頬張りながら、満面の笑みで会話を交わし、店中に笑い声が響きわたっている。
「外食離れ」「孤食」などという近年の風潮をみじんも感じさせないほど活気にあふれ、賑わいを見せているこのお店は、焼き鳥チェーンの『鳥貴族』だ。同店が開業したのは32年前。大阪府東大阪市の繁華街にある9坪の小さな店だった。
フードからドリンクまですべて280円均一(税抜)という低価格設定で人気を博し、関西・関東・東海地区を中心に直営店とフランチャイズ店を展開。居酒屋離れが進んでいる昨今、4期連続の増収増益を誇っている。今や、居酒屋チェーンのトップを独走してきたワタミを追い抜かんとする勢いだ。 「まだまだこれからですよ」と笑うのは、同店を一代で上場企業に育て上げた、株式会社『鳥貴族』代表取締役社長の大倉忠司さん(57才)だ。