今、「ニートの高齢化」が問題になっている――。15歳から34歳までで家事・通学・就業をせず、職業訓練も受けていない「ニート(NEET)」は、長く社会問題となってきた。2002年以降、34歳以下のニートは60万人前後で推移しており、近年は横ばいからやや減少傾向にある。
ところが、総務省の2016年の労働力調査によると、35~59歳の“中年ニート”は123万人と、34歳以下のニートの2.2倍で、増加傾向にあると報道された。取材を進めると、中年ニート増加の背景にはさまざまな問題がはらんでおり、34歳以下のニートよりも深刻な実態が浮かび上がってきた。“中年ニート”から脱出しようともがいている斉藤晃さん(45歳・仮名)に話を聞いた。
「10代の頃からアパレル業界で働いていました。有名なショップでも働いていました。知識も身につけながら若いうちから働いていたこともあって、業界でも顔が広いほうだったんです。いくつかの店を転々としていましたが、10~20代はアパレル業界で身を粉にして働いてきました」(斉藤さん。以下「」内同)
斉藤さんは30代になった頃、人生の転機が訪れた。
「30代になると、ファッションブランドを作りたいと思って、そのための資金が欲しかったんです。ショップで働いてもらう給料だけではなかなかお金が貯まらなかったので、アパレル業界からいったん離れ、歌舞伎町で風俗のキャッチを始めたんです。こちらの仕事も性に合っていたようで、月60万円くらい稼ぐことができました。ところが、こんなに稼ぐと、ろくでもないことにお金を使うようになってしまって……。毎晩のように飲み屋に行って、結局、資金を貯めたいという目標は忘れ、散財ばかりしてしまったんです」