このように2017年上半期のIPO銘柄が高いパフォーマンスとなったのは、米国におけるトランプ相場の先行き懸念、フランス大統領選挙、北朝鮮の核・ミサイル問題とリスク要因が多かった環境下で、大型株が軟調に推移した3月に21社のIPOがあり、公開価格が低く抑えられていたことも一因と考えられる。いずれにしてもIPO人気は依然として衰えず、個人投資家のリスクマネーは引き続き健在であることが確認できるので、今後もIPO市場は活況を呈していくと予想される。
ただし、2017年上半期のIPO市場別の平均初値騰落率を見ると、マザーズが156%、ジャスダックが90%、東証2部が36%、東証1部が1%と、市場によってパフォーマンスの差がはっきり見られる。東証1部に直接IPOする銘柄は市場からの調達額が大きい大型上場となるので、どうしても公開価格に対する初値の騰落率は低くなりがちなことは例年の傾向である。
なかでも、投資ファンドによる買収・再建を経て、その投資回収の出口戦略として東証1部に再上場するケースは要注意だ。実際、2017年上半期にこれに該当する再上場が2銘柄あったが、3月22日に再上場したマクロミル(調達額532億円)の初値騰落率はマイナス4.26%、3月30日に再上場したスシローグローバルホールディングスの初値騰落率もマイナス4.72%と、いずれも初値が公開価格を下回った。
■西堀敬:投資情報サイト「東京IPO」編集長などを経て、現在は「IPOジャパン」編集長(https://ipojp.com/)。IR説明会、セミナーなども多数行なう。著書に『最新版 IPO投資の基本と儲け方ズバリ!』など。