また、年金をもらう側に回っても、額が少ないために働くことを選択すれば、「在職老齢年金」制度が適用され、年金の一部または全額がカットされる。
「要は収入のある受給者には年金を払わないという仕組みです。例えば63歳で月収(報酬)26万円、年金額12万円のケースでは4万円減額されることになります」(同前)
そもそも年金の受給権は「収入があるかどうか」とは無関係であり、国に預けた保険料を老後に受け取る加入者の「権利」だ。「稼げる高齢者には払わなくていい」という考え方自体、加入者との契約関係を無視した暴挙だ。いかにして年金を払わなくて済むか。どうすれば保険料を多く取り立てられるか──この国の年金制度の“理念”が端的に示されている。
政府が画策しているのは「100年安心の年金」ではない。「100年安心の年金“制度”」なのだ。そして制度だけが保たれる一方で、国民はいつまでも“年金を受け取れる高齢者”と認められないまま、「老前破産」に追い込まれていく。
※週刊ポスト2017年8月18・25日号