悠々自適な隠居生活を送るはずだった我が家をその前に失うことになるとは。定年後まで持ち越したローンは危険だ。同様に、ファイナンシャル・プランナーの深野康彦氏はこういう。
「先日、79歳で完済するローンを組んだ人(50代)から相談があり、試算すると定年後に毎月年金の8割をローン返済に充てなくてはならない状態でした」
深野氏の試算では、例えば現在55歳で10年前に3000万円を25年返済で借りている場合、完済は2032年で70歳の時(金利3.171%、ボーナス払い300万円)。65歳で定年退職したとしたら、完済までの5年間で802万円を返す計算になる。年金がなく、アルバイト代程度の収入しか確保できなければ、資金は確実にショートする。
「年金受給年齢が70歳、75歳になったら、ごく平均的なリタイア世代でも住宅ローンを払えなくなる人が続出するでしょう。マイホームを奪われたうえに家計が成り立たなくなる悲劇は他人事ではありません」(前出・深野氏)
しかもそのローンはもともと「国が約束通りに年金を支給する」と信用して組んだものである。それなのに一方的に無年金期間の延長を強制されれば返済計画は崩壊する。それが「75歳受給時代」の最大の恐怖である。
※週刊ポスト2017年8月18・25日号